昭和四十四年以降、父一目山人が次々と公開した一目均衡表七部作は、年を追うて広く世に受け入れられ、山人の予言通り均衡表時代の到来が確かな実感となって既に数年になります。 これに伴ない同七部作ははやくから品切れとなり、増版の要請がしきりでしたが、実は私には期するところがあり、増版は時期尚早、と考え続けて来ました。 私は現在、技術屋として、ある製紙会社に勤務しております。技術屋と相場はおよそ無縁ですが、一方で私と均衡表との関係は古く、父が均衡表を公開する十年以上前のことですから、今から約三十五年になります。
相場とは無縁の環境下で、均衡表の徹底的研究をまずさせたい、と言う父の意志を継ぎ、実践して来たことになりますが、それ丈に相場について公けに云々する資格はありません。名実共に二世を襲名するのはその資格ができた時であり、その時迄増版はすまいと決めておりました。 にもかかわらず今回、とりあえず名目のみ二世をつぎ、あえて増版に踏み切ったのは、主として次の二つの理由から、できる丈早く、できる丈多くの方々に、一目均衡表三部作原著を読んでいただく必要性を痛感したからであります。 その理由は、均衡表を誤解されては困る、と言う極めて単純なことであって、さし迫ってはとりあえず次の二つであります。
一、コンピュータによる株価分析システムには、はやくから一目均衡表チャートを採用したものが発売されていましたが、最近は証券会社、投信、生保、あるいは証券新聞等に迄、一目均衡表が広く受け入れられ、一目均衡表による相場観測記事が目につくようになりました。これはある意味で非常によろこばしいことではありますが、これらの読者がその記事を素直に受取る範囲は問題ないとして、読者が断片的な記事を勝手につなぎ合わせることによって万一、均衡表を誤解し、それによって相場に失敗するようなことがあっては、との懸念が強まったことが一つ、であります。
二、つい最近、一目均衡表絶版、と称して、「一目均衡表○○流利用法」なるビデオが当社とは全く関係ないところから発売されました。事態ここに至り、これをこの侭放置する訳にはいかなくなりました。
父一目山人の願いは、総ての読者一目均衡表を正しく理解して貰い、それによって総ての読者に資産を形成して貰うことでありまして、その為には、利用法は絶対に一目山人流、でなければなりません。百歩譲って、不幸にして読者の理解が足らぬ時は、最低限各読者流利用法でなければなりません。 ビデオの内容がどんなものかは知りませんが、もし○○流が全く一目山人流と同一であれば、著作権は真向から侵しているものの、その購入者には迷惑はかからぬので、この点は問題ありません。 しかし一方、一目山人流からもし少しでも逸脱している場合、即ちその著者独自の何かがほんの少しでも入っていると判断される場合は、一目均衡表の名に於て購入者に迷惑をかけることになるおそれがあり、それこそ大問題であります。
いずれにせよ、第三者による「一目均衡表○○流利用法」等というものの流布は、その発想がいずれにあるにせよ、一目山人の息子として断じてこの儘放置する訳には行きません。 しかし乍ら著作権問題はひとまず後に置いて、とにかく、一目均衡表の表面を触った丈で理解したと思った為、あるいは曲った形で利用した為に、一般者が害を被むること丈は何としても防がねばなりません。 それにはとにかく、増版を急ぐしかない、との結論に至り、この七月急拠二世をつぐこととし、会社を設立し、均衡表三部作の増版に踏み切った訳であります。 皆様の、一目均衡表原著の徹底的勉強、御研究と、それによる成果を祈念してやみません。